精神疾患は、本人だけでなく家族や友人など、周囲の人にとっても心が痛いものです。症状は長引くことが多いため、長年辛い思いをしている方も少なくありません。精神疾患を患う方、また大切な人が精神疾患を患ってしまった方が少しでも楽になるためには、社会全体で精神疾患への理解を深めることが大切です。
いまだ消えない、精神疾患への差別・偏見
精神疾患に悩まされる方は年々増え続けています。厚生労働省の調査によると、2014年の患者数は392万人。がんに罹患する人は3人に1
人と言われていますが、精神疾患の患者数はそれすら大きく上回っているのです。
今や身近な病気と言える精神疾患ですが、病気に対する社会の理解は決して進んでいるとは言えません。統合失調症は以前「精神分裂病」と呼ばれていましたが、その呼び名から受けるイメージ、精神疾患をテーマとしたサスペンスやホラー映画などのフィクション作品が与えるイメージ、さらには精神科への通院歴のある患者が起こした事件の報道など、さまざまな事実と虚構とが絡み合って、一般的に「怖い」「不気味」といったイメージが定着してしまいました。徐々に精神疾患への理解が広まってきた今でも差別や偏見が完全になくなったわけではなく、「うつ病は甘え病」といった誤った認識をもつ人も少なくありません。症状が目に見えないために、周りの理解が得られにくいのです。中には、精神疾患を患っていることを隠すために家族が本人を社会から隔離してしまい、ますます症状を悪化させてしまうケースもあります。
また、長期入院による隔離収容も問題視されています。特に日本の精神疾患による入院患者数は世界的に見ても高水準で、2014年時点で29万人近くが入院しています。このうち、1年以上の長期入院を続けている患者は18万人以上にのぼります。しかし、入院が長引くほど社会復帰は難しくなりますし、閉鎖的な空間に人を閉じ込めることは人権侵害につながる可能性もあります。欧米などの先進諸国ではすでに精神病棟を閉鎖し、地域でケアしようという動きが広まっています。日本でも現在、厚労省が2020年度末までに全国の精神科入院患者数を最大で約4万人減らす目標を掲げています。しかしその実現のためには、家族だけではなく地域住民、ひいては社会全体の精神疾患への理解やサポートが欠かせません。
精神疾患と精神障害の違い
心理的な病気や障害は、「精神疾患」と呼ばれる場合と「精神障害」と呼ばれる場合があります。そもそも「疾患」とは、医学的に原因や症状、対処法などが明確であるものを指す言葉で、一つの病気として認められるものに用いられます。それに対して障害とは、原因や症状などが一つの「病気」とするには明確ではないものに用いられることが多いようです。ただ、精神疾患は原因不明の場合が多く、統合失調症などは原因不明であるにも関わらず代表的な精神疾患として分類されています。これは、その症状や対処方法が一つの病気と分類するだけのまとまりを持っているからと考えられます。
このように、医学的には分類されている「精神疾患」と「精神障害」ですが、一般的にははっきりと区別されないまま用いられることが多く、時には精神に関わる症状を総じて「精神病」と呼ぶこともあります。
精神疾患の原因
一口に精神疾患と言っても、その原因や症状はうつ病や統合失調症、適応障害など種類によってさまざまですし、同じうつ病であってもその背景は患者さん一人ひとりによって異なります。例えば、一般的にうつ病の原因はストレスだと考える人が多いと思いますが、実際は、身体的な病気や環境の変化、脳の機能低下、遺伝的要因など、さまざまな要因が複雑に絡み合って発病すると言われています。また、こうした要因があるところにさらに過度のストレスが加わったことが引き金となり、精神疾患を発病するというケースも多いようです。つまり、「これがうつ病の原因」と言い切れるようなものではなく、はっきりとしたメカニズムはまだ分かっていない状態なのです。統合失調症も同じく、原因はいまだ解明されていません。環境の変化によって引き起こされることが多いと言われていますが、うつ病と同様それはきっかけの一つにすぎず、原因そのものではないと考えられています。
主な精神疾患とその症状
精神疾患は、主な病気として、うつ病や統合失調症、適応障害などが挙げられます。
うつ病
気持ちがゆううつになり、物事に対して否定的な見方をするようになります。すると、これまでできていた仕事にやる気が起こらなくなる、好きだったことにも興味がなくなる、集中力がなくなるといった症状が現れます。
1日2日という一過性のものではなく、こうした落ち込みの症状が2週間以上続く場合はうつ病の可能性が高いとされます。
病状が進むと、心だけではなく身体的な症状も現れます。例えば、頭痛や腹痛、食欲の減退、疲労感など。さらにひどくなると「自分は生きている価値のない人間だ」と思い込み、自殺を考えるまでに至ります。
双極性障害(躁うつ病)
気分の落ち込みが激しいうつ状態と、気分が高揚する躁状態を繰り返す病気です。うつ状態の時はゆううつになり、食欲がなくなったり眠れなくなったり、物事に対する興味関心を失ったりするなどの症状が現れるのに対し、躁状態の時は気分が高ぶり、休むことなく動き回る、自信過大になるなど、周りから見るとまるで人が変わったように感じられます。このような躁状態が数日~数週間続いた後、再びうつ状態に陥るため、それまで自分が行なってきたことに対する自責の念にかられ、非常に苦しい気持ちになります。
以前は躁うつ病と呼ばれていた双極性障害ですが、うつ病の一種というわけではなく、治療法も異なります。うつ状態の時に病院に行き、うつ病の治療だけを受けていると症状が悪化することもあります。うつ病と診断されていたが、その後双極性障害だったと判明することも少なくはなく、専門家が見ても判断は難しいようです。
統合失調症
初期症状は、不眠や不安、焦りなど誰もが経験するようなもので、この時点では本人も周囲の人も精神疾患であると気づかないことが多いようです。しかし症状が進むにつれ、幻聴や幻覚が目立つようになります。これを陽性症状といい、例えば自分を批判している声が聞こえる、誰かに狙われていると感じるなど、あるはずのないものが本人にとっては事実として現れます。周囲とのコミュニケーションもうまくとれなくなり、不安や緊張から興奮することも多くなります。さらに進行すると、感情表現がとぼしくなり、物事への関心を失う、意欲や気力が低下するといった陰性症状が現れます。このように、時期によって症状が大きく変化する点が統合失調症の特徴と言えます。
適応障害
特定の出来事や環境の変化など、はっきりとしたストレス要因に対して耐えがたいほどの強いストレスを感じ、不安感や集中力の低下、イライラなどの精神症状が現れます。誰しもストレスに対しては落ち込み、不安やイライラを感じるものですが、適応障害の場合はその程度が著しく、日常生活に支障をきたします。しかし、うつ病や統合失調症とは異なり、発症の要因がはっきりと分かっているので、それを取り除くことができれば症状は改善していきます。
この他にも、パニック障害や強迫性障害など、その症状や原因によって精神疾患はさまざまな病名に分類されています。いずれも、本人や周りが気づいてから病院に行くまで、また専門家にたどりついて病気と診断されるまでに時間を要することが多く、症状も長引く傾向にあります。
精神疾患と自殺
WHO(世界保健機関)や厚生労働省の報告によると、自殺者のうち約95%
が自殺時において何らかの精神疾患に罹患している状態であったとされています。様々な悩みが原因で心理的に追い込まれた結果、うつ病などの精神疾患を発症して「自殺以外の選択肢がない」と感じるまでに至ってしまうのです。そのほとんどが衝動的で、自由な意志や選択の結果から自殺する人は少ないと考えられています。つまり、本当は生きたいのに、死以外の解決方法が見つからないところまで追い詰められているのです。「自殺したい」という言葉を口にするということは、何らかの支援を求めているということ。そこには精神疾患による判断力や気力の低下が深く関わっているということを、周りの人も理解しておくことが大事です。
日本では、精神疾患に対する差別や偏見が強いことから、精神科を受診することに抵抗感を持つ人も少なくありません。救急救命センターに運ばれた自殺未遂者のうち、医療機関での診察を受けていた人は2割にとどまるという調査結果もあります。しかし、自殺に至るまでに何らかのサポートを受けていれば、もっと自殺を減らすことはできるはずです。
精神疾患の治療
医学の進歩によって、精神疾患のメカニズムも少しずつ解明されてきています。しかしそれは医学の歴史から考えればごく最近のこと。いまだにはっきりとした根本的な原因は分かっておらず、病院でも「これをすれば治る」というような治療法は確立されていません。薬を飲みながら通院を続け、様子を見るという治療方法が一般的です。
また、症状が落ち着いたとしても、いつ再発するか分からないリスクが潜んでいるため、長期にわたる治療が必要になる点も精神疾患の特徴です。統合失調症などは、克服するのではなくうまく付き合っていかなければならない病気と言われており、こうした点が、精神疾患は「完治」が難しいとされる所以です。
ただ、完治までには時間がかかる場合が多々ありますが、決して治らない病気ではありません。精神疾患を治すためにもっとも大切なことは、信頼できる専門家に相談することでしょう。心理カウンセラーや心療内科、精神科などの医療機関では投薬による治療を行なっています。精神疾患の症状は一人ひとり違うため、治療法も全く同じというわけではありません。その人に合った治療を行ってもらうためにも、まずは相談して患者本人のこと、生活背景、家族関係などをよく知ってもらいましょう。専門家の言葉を信じて、その指示に従うことが完治への第一歩です。
周りの人が気をつけておきたいこと
環境の変化や心理的ストレスが引き金となることが多い精神疾患ですが、それは周りからすれば「そんなことで」というような小さなことかもしれません。ですから、誰かに相談しても「誰にでもそういうことはあるよ」と言われてしまうことも多々あります。しかしその言葉によって「小さなことで落ち込んでしまう自分」をさらに責め、我慢して抱え込えこんでしまうという悪循環を招きかねません。また、その症状がどれだけ辛いものかは本人にしか分からないために、周りの人にとっては倦怠感や気力の低下が怠けや甘えに見えることもあります。しかし、落ち込んでいるからといって叱責したり無理に励ますのは逆効果です。周囲の人が患者さんにできることは、原因を追求することでも励ますことでもなく、そばにいて、社会復帰できるまで焦らずに見守ること。現代医学をもってしても解明されない疾患なのですから、ご家族もその辛さを「分かってあげられない」というストレスを抱えるのではなく、分からなくてもいい、分からなくて当たり前、という気持ちでコミュニケーションをすることが大事ではないでしょうか。
長引く精神疾患は霊障の可能性も
患者さんご本人、またはそのご家族であっても、一つ、ぜひ心にとめていただきたいのが「私のせいで病気になった」と自分を責めないでほしい、ということです。先述したように、精神疾患の原因はいまだ解明されていませんが、「自分の弱さのせい」とか「育て方のせい」というような単一的な原因ではないことは、医学的にも認められています。
また、こうした原因不明の症状が長く続いている方に考えていただきたいのが「霊障」の可能性です。霊障とは、成仏できないでいる人や動物の霊が生きている人間に様々な悪影響をもたらすことを言います。霊障は時に、精神疾患を引き起こすこともあります。例えば、倦怠感や不安感に悩まされて不眠になったり、自己嫌悪に陥ったかと思えば突然ヒステリックになるなど感情の波が激しくなったり、多量の飲酒をやめられなかったり、そういう自分を悲嘆して自殺を考えてしまう方もいます。
精神疾患が霊障によるものかどうかは、霊鑑定をすることで分かります。その結果、霊障であると分かれば、除霊で解決できる可能性が高いです。もちろん、霊障ではないと分かれば、やはり病院への通院をおすすめすることもあります。しかし、精神疾患の症状が長引きなかなか治らない方は、解決への道筋を示す一つの可能性として霊障を考えていただければと思います。